徳島県の「茶ごめ」は、乾燥そら豆とざらめ糖を米と一緒に炊く、茶色く甘い炊き込みご飯です。名前からお茶を使ったご飯を想像するかもしれませんが、茶色い見た目は、煎ったそら豆と薄茶色のざらめ糖を炊き込むことから生まれます。そら豆は栗のようにほくほくし、甘いご飯と重なって独特の味わいになります。
茶ごめは、徳島の田休みや農作業の合間、正月、法事など、地域や家庭によってさまざまな場面で食べられてきました。この記事では、農林水産省と全国学校栄養士協議会の資料をもとに、茶ごめの材料、茶色くなる理由、田植えとの関わり、掲載レシピの一例、食べ方、現代の家庭で作るときの考え方を紹介します。
徳島の茶ごめとは

茶ごめは、そら豆とざらめ糖を使う甘い炊き込みご飯です。農林水産省の資料では徳島県の郷土料理として紹介され、そら豆のほくほくした食感と、ざらめによるやさしい甘さが特徴とされています。一般的な白いご飯や塩味の豆ご飯とは違い、炊き上がりは茶色く、見た目にも味にも甘味が感じられます。
地域によって呼び方や作る時期、豆の扱いに差があるため、茶ごめを一つの固定レシピだけで説明することはできません。この記事で扱う材料と手順は、全国学校栄養士協議会が「田休み」の行事食として掲載している4人分の例を中心にしたものです。家庭で作るときは、米の種類、そら豆の乾燥具合、好みの甘さに合わせて調整してください。
なぜ茶色いご飯になるのか
茶ごめの色は、煎ったそら豆とざらめ糖からつくられます。乾燥そら豆を厚手のフライパンで茶褐色になるまで丁寧に煎り、ゆでて皮をむき、そのゆで汁を炊飯に使います。豆の香ばしさがゆで汁に移り、さらに中ざら糖の薄い色が加わることで、白米だけを炊いたときとは違う色になります。
強い焦げ色をつける料理ではありません。豆を煎る工程は、表面を香ばしくしながら、炊いたときにそら豆の風味を引き出すための下ごしらえです。焦げて苦くならないよう、火加減を見ながら全体を動かします。煎り加減が浅ければ色や香りが穏やかになり、深ければ香ばしさが前に出るため、鍋やフライパンの厚さによっても仕上がりは変わります。
そら豆とざらめを使う理由
茶ごめの主材料は、米、乾燥そら豆、ざらめ糖、塩、そら豆のゆで汁です。そら豆は炊き込みご飯の具であると同時に、色と香りをもたらします。ざらめは白砂糖とは違う、やや色のついた甘味料です。甘さがご飯全体に広がり、豆の香ばしさと合わさって、茶ごめらしい味になります。
農林水産省の子ども向け食文化資料では、新しいそら豆が出回る前に古いそら豆を使い切るため、農家で作られる料理として広がったと説明されています。旬の豆を短期間に食べるだけでなく、乾燥させておいた豆を炊き込みご飯に生かす考え方です。食材を保存し、次の収穫前まで使うという農家の暮らしが、料理の材料に表れています。
田休みと農作業の食事
全国学校栄養士協議会は、徳島県の行事食として「6月・田休みの茶ごめ」を紹介しています。田休みは、田植えの前後など農作業の節目に設けられる休みを指す資料上の表現です。田植えのようにまとまった作業を終えた時期に、家族や働き手が一緒に食べるご飯として茶ごめが作られてきました。
茶ごめは、米と豆と砂糖を一緒に炊くため、主食としてまとまりがあります。農作業の合間に食べやすいよう、おにぎりにして、たくあんとお茶を添える食べ方も資料に記録されています。甘いご飯にあっさりした漬物を合わせることで、口の中を切り替えながら食べられます。ここでいう農作業との関係は、すべての地域・家庭に同じ形で残っているという意味ではなく、行事食資料が伝える徳島の食習の一例です。
正月や法事にも登場した茶ごめ
農林水産省の資料では、徳島県内の茶ごめについて、地域によって正月に食べたり、法事の際に仏壇へ供えたりする文化が紹介されています。田休みの食事だけでなく、家族や地域の節目に用意するご飯でもあったことがわかります。料理の役割が一つに限定されず、農作業、年中行事、供え物という複数の場面に広がっている点が特徴です。
行事に茶ごめを用いるかどうか、いつ炊くか、甘さをどの程度にするかは、地域や家によって違います。公的資料にある「正月」「法事」という説明を、徳島県内の全家庭に共通する決まりとして受け取るのではなく、各地の食習の幅を示す情報として読む必要があります。郷土料理には、同じ名前の料理を同じ時期に食べるという一律のルールより、家ごとの記憶や土地の習慣が重なっています。
掲載レシピの材料(4人分)
全国学校栄養士協議会が掲載する「田休み・茶ごめ」の材料は、精白米520g、乾燥そら豆300g、ざらめ糖または中ざら糖85g、食塩2.5g、そら豆のゆで汁900mlです。米の重量は家庭で使うカップ数と一致しない場合があるため、初めて作るときは元資料の重量を参考にしつつ、炊飯器の容量に合わせて全体を比例させます。
- 精白米:520g
- 乾燥そら豆:300g
- ざらめ糖または中ざら糖:85g
- 食塩:2.5g
- そら豆のゆで汁:900ml
この分量は、地域の家庭が必ず守ってきた唯一の配合ではありません。乾燥そら豆を戻すと重量や水分が変わり、米の吸水量も炊飯器で異なります。甘さを控えたい場合は糖を減らす方法もありますが、色、つや、味のまとまりも変わります。最初は掲載分量を小さく再現し、次に家族の好みへ調整すると、味の変化を比較しやすくなります。
そら豆を煎る下ごしらえ
まず、乾燥そら豆を厚手のフライパンで茶褐色になるまで丁寧に煎ります。豆が一か所だけ焦げないよう、フライパンをゆすったり、木べらで動かしたりしながら加熱します。表面の色が変わり、香ばしい香りが立ったら、火を止めて次の工程へ進みます。強火で短時間に色をつけるより、状態を見ながらじっくり煎るほうが扱いやすくなります。
煎ったそら豆は、たっぷりの湯につけて一度沸騰させます。豆が柔らかくなったらざるに上げ、皮をむきます。ゆで汁を別に取っておき、その汁を米を炊く水分に使う手順になっています。ゆで汁を捨てずに使うことが、茶ごめの色や豆の風味を米へ移すポイントです。
そら豆の皮をむく作業は、豆が熱いうちに無理をするとやけどにつながります。粗熱を取り、指で扱える温度になってから、薄皮や硬い部分を確認します。豆の大きさや乾燥状態で戻り方は異なるため、硬さが残る場合は炊飯に入れる前にもう少しゆでます。資料の手順を守りながら、豆の状態を目で確かめることが大切です。
米に豆、ゆで汁、ざらめを加えて炊く
米は洗って水気を切ります。炊飯器や鍋に米を入れ、皮をむいたそら豆、取っておいたゆで汁、ざらめ糖、塩を加えます。全国学校栄養士協議会の作り方では、加えた状態で30分浸してから炊き上げます。浸水時間を置くことで、米の中心まで水分が届き、豆や糖の入ったご飯を炊きやすくします。
糖を入れたご飯は、通常の白飯と比べて鍋底が焦げやすい場合があります。炊飯器なら機種の説明書と容量を確認し、鍋炊きなら最初の火加減と蒸らしを見ます。水分が多すぎると柔らかくなり、少なすぎると豆が硬く残るため、乾燥そら豆の戻り具合で調整します。原資料の900mlは、掲載された材料の組み合わせに対する一例として扱ってください。
炊き上がりは、まずそら豆が柔らかくなっているかを確認します。米の粒が立ち、茶色い色が均一になっていれば、しゃもじで底から返します。豆をつぶしすぎると全体が粘りやすくなるため、混ぜる回数は必要な範囲にとどめます。甘い香りを逃がさないよう、炊飯後は蓋を長く開けたままにせず、盛り付ける分だけ取り分けます。
茶ごめに合う漬物とお茶
茶ごめは、たくあんや梅干しのようなあっさりした漬物とよく合います。甘いご飯に塩味や酸味が加わることで、口の中が締まり、次の一口を食べやすくなります。漬物を細かく刻んで混ぜ込むより、まずは別皿に添えて、茶ごめそのものの甘さと豆の香りを確かめると、組み合わせの違いがわかります。
田休みの茶ごめは、おにぎりにして食べ、お茶を添える食べ方も紹介されています。おにぎりにすると、農作業の場所へ持ち運びやすく、冷めても豆の食感が残ります。現代の家庭で作る場合も、炊きたてを茶碗によそうだけでなく、小さめのおにぎりにして漬物と合わせると、行事食資料が伝える食べ方に近づけられます。
甘いご飯を主食として味わう
茶ごめは菓子ではなく、米を中心にした炊き込みご飯です。ざらめを使うため甘味ははっきりしていますが、そら豆の香ばしさと塩が入ることで、食事の一品としてまとまります。最初に食べるときは、濃い味のおかずを重ねず、漬物やお茶のようなシンプルな添え物にすると、茶ごめの特徴が感じやすくなります。
そら豆は、炊飯によって栗のようなほくほくした食感になります。豆の皮をむくと米とのなじみがよくなり、口当たりも均一になります。一方で、豆の形を残したい家庭では、混ぜるときに崩さないことを重視します。どちらが正しいというものではなく、豆を具として楽しむか、ご飯全体に風味を回すかで仕上がりが変わります。
古いそら豆を使い切る知恵
茶ごめの背景には、次のそら豆が出回る前に、保存していた豆を使い切るという考え方があります。新しい豆を待つ時期に、乾燥させた豆を戻し、煎り、ゆでてご飯に入れることで、食材を無駄にしません。甘い味付けは、農作業の合間に食べるご飯として語られる一方、豆をおいしく食べ続けるための調理の工夫でもあります。
乾物は生鮮品のように短期間で使い切る必要がない反面、戻す、煎る、ゆでるという時間がかかります。茶ごめは、その手間をかける価値を、茶色い色、香ばしさ、ほくほくした食感、甘いご飯という形で伝える料理です。便利さだけで判断すると工程が多く見えますが、保存食材を家族の食事へ戻す一連の技術として見ると、郷土料理らしい意味が見えてきます。
正月・法事・学校給食への広がり
茶ごめは、農家の作業食としてだけでなく、地域によって正月や法事の場面にも登場してきました。行事に甘いご飯を用意すること、仏壇へ供えること、家族で分けて食べることには、それぞれの地域の記憶があります。行事の内容や供え方は家ごとに異なるため、一般化せず、資料に記載された文化の一例として紹介するのが適切です。
現在は、学校給食の献立例にも茶ごめが掲載されています。全国学校栄養士協議会の資料では、茶ごめに、たくあん、阿波尾鶏の照り焼き、いんげんのごま和え、はも団子スープなどを組み合わせた献立が示されています。学校給食で扱われることは、昔の料理をそのまま保存するだけでなく、子どもが郷土の味を知る入り口にもなります。
家庭で作るときの調整ポイント
初めて作る場合は、乾燥そら豆を煎る工程で焦がさないこと、ゆで汁を取っておくこと、米と豆を30分浸水させることを意識します。甘さを調整したいときは、糖を一度に大きく減らすより、掲載分量を小さくして味を確認し、次回から変更するほうが失敗を比べやすくなります。炊飯器の種類によって糖入りの炊飯が適さない場合があるため、説明書に従ってください。
乾燥そら豆を戻す時間や水分量は、豆の保存状態で変わります。古い豆は戻りにくいことがあり、表面だけ柔らかくても中心が硬い場合があります。炊き上がりで硬さが残ると感じたら、次回は下ゆでを長くする、浸水状態を確認するなど、豆側の工程を見直します。米の水分だけを増やすと、ご飯が柔らかくなりすぎる可能性があるため、豆と米を分けて考えるのがコツです。
保存についても、炊き込みご飯だから常温で長く置けると考えないようにします。炊き上がったものは清潔な器具で小分けし、粗熱を取り、冷蔵または冷凍など家庭の衛生管理に合わせて早めに食べます。そら豆や米の状態、室温によって安全性は変わるため、においや見た目に異変がある場合は食べないでください。
茶ごめと徳島の郷土料理を知る
徳島の郷土料理には、そば米雑炊、でこまわし、金時豆入りのかきまぜなど、地域の作物や行事と結びついた料理があります。茶ごめも、そら豆と米、ざらめという身近な材料を組み合わせ、農作業や家の行事の記憶を伝える料理です。豪華な食材を使う料理だけが郷土料理なのではなく、日常の材料を特別な日に食べる形へ変えることも、食文化の一部です。
徳島市の食育に関する資料でも、茶ごめは次世代に伝えたい郷土料理・伝統料理を尋ねる項目に含まれています。これは、茶ごめがすべての人に同じ頻度で食べられていることを示す統計ではありませんが、県内の食文化を見直す対象として挙げられていることを確認できます。地域料理を調べるときは、料理の作り方だけでなく、どのように記録され、伝えようとされているかにも目を向けると、背景がより明確になります。
徳島の茶ごめを味わうときの見方
「茶ごめ」という名前だけで検索すると、徳島の郷土料理のほか、茶を使ったご飯や、農作物の品質に関する「茶米」など、別の意味に近い情報も混ざります。徳島の料理を調べる際は、「徳島県 茶ごめ」「そら豆 ざらめ」「田休み 茶ごめ」といった語を組み合わせ、農林水産省や全国学校栄養士協議会の資料を優先して確認すると、情報を整理しやすくなります。
現地で食べられる場所や販売品を探す場合は、料理の提供時期や店舗の営業状況が変わるため、自治体、観光協会、店舗などの最新の公式案内を確認してください。この記事は特定の店、価格、営業時間を紹介するものではなく、茶ごめの料理としての特徴と、資料に残る食習・作り方をまとめたものです。
まとめ
徳島の茶ごめは、乾燥そら豆とざらめ糖を米に加えて炊く、茶色く甘い炊き込みご飯です。そら豆を煎ってゆで、ゆで汁を炊飯に使うことで、香ばしさと色が生まれます。新しいそら豆が出回る前に古い豆を使い切る料理として農家に広がり、田休みの食事、正月、法事、家庭の普段のご飯、学校給食など、地域や時代に応じた場面で食べられてきました。
掲載された分量は、精白米520g、乾燥そら豆300g、ざらめ糖85g、食塩2.5g、ゆで汁900mlという4人分の一例です。豆の戻り方や甘さは家庭で変わるため、原資料を出発点に少量ずつ試し、たくあんや梅干し、お茶と組み合わせて味わうと、茶ごめの食文化が身近に感じられます。茶色いご飯の一膳には、収穫の間をつなぐ保存の知恵と、農作業や行事で人が集まる時間が込められています。
参考情報
- 農林水産省「うちの郷土料理:茶ごめ 徳島県」(伝承地域、由来、材料、作り方、行事との関わり)
- 農林水産省「茶ごめ…徳島県」(そら豆とざらめ、食べ方、家庭・給食での紹介)
- 全国学校栄養士協議会「<田休み>茶ごめ」(田休みの由来、4人分の分量、下ごしらえ、食べ方)
- 徳島市「食文化について」(郷土料理・伝統料理に関する市民アンケート結果)
- 農林水産省「うちの郷土料理 次世代に伝えたい大切な味」(徳島県の食文化を含む郷土料理資料)


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